…君の名は。

正月に作業した鋏を納品する朝を迎えた。
先方は本日が仕事始め。「たまには畏まった格好をして納品に行ってやろう!」と思いスーツに身を包んだ。
せっかくスーツ着たんだからと少しまわり道をして多賀大社へ。まだ正月モードで駐車場は有料だった。参拝に行って理解した…念頭の御祈祷を請ける会社が多くいるという事。
団体で来る会社もあれば…社長1人で来る会社もある様で、いろんな会社名が聞こえてきた。その中で「鍛冶屋町の…」という聞き慣れた名前が聞こえたが、周りのザワザワ音が会社名をかき消して何処なのか分からなかった。

彦根ICで高速道路に乗り>>>>関ICまで快適なドライブを楽しんだ。多賀大社から駐車場までの道中で売っていたあられを購入したから、ドライブのお供にボリボリ食べながら走る。

「あれ?どーしたの」「似合わないなぁー」と納品先で言われ「放っといて」と会話を交わした。ココお昼から新年会と知っていたから「新年会に参加しようと思って着てきたんや」という返し言葉を考えていたのに…使うのを忘れた。

スーツを来たのは、年末から老人ホームに入ってる婆ちゃんに新年の挨拶に行こうと考えたから。…特別畏まる必要など無いけど(笑)
手土産にフランスの土産を持って行った。
本来なら実家だった家の方に届けようと思っていたのだが、まったくタイミングが合わず年を越してしまったお土産を持って。

施設では「インフルエンザが流行っている」という理由でロビーでの面会だった。マスクを渡されたので装着し、ロビーのソファに腰を下ろした。

しばらくすると…廊下を歩いて向かってくる道中の会話が聞こえてきた。
施設の人「誰か分からないけど…カッコイイ人が面会に来てるよ。良かったねー」
婆ちゃん「誰やろねー?カッコイイ人なんてわからん」
施設の人「いつものお孫さんとは違うから…きっと違うお孫さんやね」
婆ちゃん「誰やろねー?わからんわ」
施設の人「楽しみやねー」

近くまで来たから立ち上がり…「おう。久しぶり」と婆ちゃんに手を上げてみた。
施設の人にサポートされながら歩いてきて顔を合わせるや…「どちらさんやった?」と 冗談をかました。

大腿骨骨折で入院中に会ったきりだから4ヶ月ぶりくらいに顔を合わせた事になる。
あの時こんな風に自分で歩けるように回復できるとは誰もが思いもしなかった。96歳の婆さんが。
耳には補聴器が刺さっているが、聞こえが悪いようで会話が成立しない。前よりも遠くなったのかと思ったが、補聴器がしっかりセットされていないだけだった。
確かに最近の出来事などは直ぐに記憶が薄れていくようで、自分がいつからココに居るのかを分からないと言っていた。でも、ボケ老人ではなかった。

婆ちゃんは…
「なんもしてやれんでごめんや」と言い、「家に居れんことが寂しいわ」と漏らしていた。「友達がおって楽しい」と言い「家の者が誰も来んでさみしい」と漏らす。
「来てくれてありがとう♪元気がでたわ」と言い「笑顔」を漏らした。

入院生活>>>>施設生活だから、もう半年以上を施設で寝起きしてるのか。帰ったとしても居場所無いやろな。きっと。

持っていったお土産はお菓子。
「婆ちゃんの周りの人達と食べさせて欲しい。」
…そうお願いしたが、規則で出来ないとの事だった。一つ食べたら…弟に渡されるとのことだった。まー 婆ちゃん経由で実家だった家に渡されることになるだけやからOKとしよう。
お昼ご飯の少し前に行ったから、あっという間に面会時間は終わった。
「また来るよ」と別れ、廊下を施設の人と一緒に歩く婆ちゃんの後ろ姿を見送った。

施設の人「お昼ご飯何かな?」
婆ちゃん「いい匂いしてくるね」
施設の人「カレーかな?」
婆ちゃん「カレーかな?」
施設の人「楽しみだねー」
婆ちゃん「うん。楽しみだねー」

まるで子供と話すような施設の人と婆ちゃんのやり取りを見ていた。

婆ちゃんは振り向くことなく廊下を左に曲がり…消えていった。

弟よ…婆ちゃんはボケちゃいねーぞ。
弟よ…本当にこれが正しい選択か?
これがあなた達の全力か?
後で後悔してもとりかえしつかねぇぞ。
家を継ぐとはこういうことか?


…ブログ書きながら…涙した。


【それいけ!アイアンマン】

「irondesignerやまだ」の日々のできごと集

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